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「もうすぐ救護班が…!救護がくればわたし達は助かる!!」
「やめとけ…わかってんだろ」
「う…」
倒れこんだ土の上。
「っは…泣くな…剣士だろ」
「でも、だって…!」
「これ以上、この戦乱の世に、生き延びてどうする…」
染み込む涙。
「それでも…生きるから」
「ああ」
「……だから、二人で、」
「…安心しろ、また…会える」
二人の間に菫が一輪。
「また……必ず会える…」
『それ』が夢に現れ始めたのは16歳になった時辺りだったと記憶している。細かい時期は曖昧で、それでも夢の内容は頭にこびり付いたように離れなくて。美しく散る桜でもなく、誇らしく香る梅でもなく、道端に咲く小さな菫に妙な懐かしさを覚えるようになったのは、その頃だったと思う。
「(…咲いてる)」
風が強い。スカートから出た脚が寒くて少し震える。春はまだ始まったばかりで、コートなしで外を歩くにはまだ早い。菫。思わず立ち止まって眺める。きっと、あれは前世のわたしだ。何の根拠も無い。けれど確信している。彼女は、わたしだ。彼が誰かはわからないけれど。
「(会えるのかな)」
それすらも、わからないけれど。